リサイタルプログラムの計画、パート3:大好きな曲を演奏する

メンデルスゾーン : 無言歌集 第2巻 「ヴェネツィアの舟歌 第2」 Op.30-6 嬰へ短調

お気に入りでない衣装を着るように言われたと想像してみてください。

そして、それを着て、とても重要なイベントに出席したところを想像してみてください。

たとえ人から「素敵だね」と言われても、その褒め言葉を素直に受け取れないでしょう。なぜなら、お気に入りを着ていないからです。好きではないものを着て、納得がいかず、楽しむことがとても難しくなります。

これは、曲を選ぶときも同じです。音楽を通じて感情の共有ができることを目指しています。もし私の中に「納得」がなければ、それはすぐに表に出てしまいます。ベストを尽くすような集中ができず、お客様もきっと気づいてしまうでしょう。だからこそ、すべての音符を正しく演奏できるからという理由ではなく、自分の感性が選んだ曲だけを演奏するのが良いと思うのです。

今私は、メンデルスゾーンの無言歌集にある「ヴェネツィアの舟歌」Op.30-6を仕上げています。これは私が大好きな曲の一つで、まるでお気に入りのドレスにあれこれとアクセサリーを合わせるときのように、いつも新しい方法でより魅力的に演奏しようと試みています。

最近、コズモ先生のレッスンで刺激を受け、曲の様々な側面を引き出すために新しいことに挑戦するようになりました。私の作品へのアプローチ方法がまた一歩前進したんです。先生の刺激的で新しいアイディアにとても感謝しています。より洗練され、解釈も深まったことを大変嬉しく思っています。

それには多くの理由があります。まず、コズモ先生はヴェネツィアの街をより感情的にイメージできるよう、街の様子を説明してくださいました。運河の水面はとても穏やかで、ゴンドラの動きが絶えず小さく静かな波を立てているそうです。また、夕方には街のあちこちから教会の鐘が聞こえるので、曲の中盤の2小節にわたる長いトリルを使ってその情景を表現できるとアドバイスをくださいました。さらに、曲の最後のリタルダンドをゴンドラが目的地に到着する様子として想像するのも良いと。実際のヴェネツィアの様子を詳しく教わりながら、それらが演奏のアイディアになっていきました。

このレッスンの後、私はこの曲を全く新しい視点で考えるようになりました。まず、テンポです。少しだけ遅くしました。それから、左手の伴奏を波、右手のメロディーをゴンドラを漕ぐゴンドリエーレの歌に見立てました。美しく情熱的に歌う姿を想像し、ルバートを使って少しゆっくりと、しかし強い感情を込めて演奏するようにしました。

この作品のもう一つの特徴は、メンデルスゾーンが左手を、各小節6つの8分音符の塊として進行させ、最初の8分音符で1拍目が来るように書いていることです。また、メンデルスゾーンは6つの音符のうち、3番目と5番目の音符にのみ和音を使用しています。

これらの音符は表拍ではないため、通常は強調されません。そして、ほかの音符は、表拍の部分あっても、すべて単音で書かれています。コズモ先生は、メンデルスゾーンはこうすることで、6つの音符がただ流れていくのではなく、2つの和音を聴かせるために少し「待つ」ことを意図したのではないかとおっしゃっていましたが、私はその考えに大いに納得しました。

その結果、波のような左手の拍子とリズムはまるでゴンドラを漕ぐようで、和音は水の抵抗を表現しているように感じられます。

このようにこの曲にアプローチすることは、私にとって素晴らしい学びの経験となり、多くの洞察を得るとともに、作品に対する考え方を新鮮なものにすることができました。

私がCCFでのリサイタルのオープニングにこの曲を選んだのは、この曲が本当に好きだからというだけでなく、この曲を通してお客様の心を音楽の旅へと「出航」させることができたら、と思ったからです。

 

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