丸亀で行ったリサイタルのコンサートプログラム(2025年7月10日)
同じ曲を異なる手が演奏しています。ヴィキングル・オラフソン、グレン・グールド、カティア・ブニアティシヴィリ、エレニ・ツォニによる、「マルチェロ/バッハのアダージョ ニ短調 BWV974」。
同じ曲ですが、それぞれの演奏から新たな発見や学びが得られます。
日曜日は、5月にニューヨークのファウスト・ハリソン・ピアノズで演奏したのと同じプログラムを演奏しました。
プログラム
I
アダージョ ニ短調 BWV974
アレッサンドロ・マルチェッロ (1673—1747)/
ヨハン・セバスチャン・バッハ (1681—1750)
II
創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO 80
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (1770—1827)
III
ピアノソナタ第13番 変ロ長調 K.333 (315c)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1756—1791)
休憩
IV
ピアノソナタ第3番ロ短調 作品58
フレデリック・ショパン (1810—1849)
すでにお客様の前で披露した曲を演奏することには、ある種の満足感があります。しかし、だからといって、決してリラックスできたり、油断して弾いたりできるわけではありません。作品にどのような新たな洞察がもたらされるか、そして、作品に対する自分の考えがどのように変化したかを、注意深く吟味する必要があります。
そのためには、まるで初めてその楽譜を読むかのように、一つ一つの小節、パッセージをじっくりと吟味し、楽譜上に新しい発見がないか、表現を新鮮なものにするための別のアイデアや方法がないかを探る必要があると思います。変わらない部分もあれば、全く新しいアプローチが必要な部分もあるでしょう。
作品を深く理解するためのもう一つの方法は、他のピアニストの演奏を聴くことです。これは、YouTubeのようなリソースがある現代において、テクノロジーの大きな利点と言えるでしょう。目標は、それぞれの異なるアプローチを検証し、各演奏者が作品のどこを強調したいのか、そして音楽が頭から手へと伝わっていく中で何が起こっているのかを理解することです。また、何を取り入れたいのか、また何を取り入れたくないのかを知るのにも役立ちます。
同じ曲を何度も演奏するということは、少し違う運指の方が腑に落ちたり、以前は考えもしなかったようなテンポが、正しいテンポに感じたりすることもあるでしょう。また、全く変えたいところがなくても、数年ぶりに好きな本を読み返したときのように、作品に対する新鮮な視点が得られることもあります。もしかしたら、解釈が変わったからではなく、自分自身が変わり、人生に対する見方が少し変わったからこそ、作品をより深く理解できるのかもしれません。いずれにせよ、作品を再び演奏するという経験は、新たな視点が得られるため、刺激的です。
何かの歌にあるように、同じレパートリーを異なるステージで演奏するとき、「古いものはすべて新しくなる」のです。