「ゾーン」に入る方法

(左から):フィリップ・グラス作曲「エチュード第6番」(ヴィキングル・オラフソン)、フィリップ・グラス作曲 オペラ「アクナーテン」(メトロポリタン歌劇場の公演予告編)、アンソニー・ロス・コスタンツォによるヘンデル作曲 オペラ「ガウラのアマディージ」より「悲しみの極み」(メトロポリタン歌劇場「At Home Gala」の一環)、「アクナーテン」公演の休憩時間にジョイス・ディドナートがコスタンツォにインタビューする様子。

今日は、アーティストが演奏の直前に、どのように集中して「ゾーン」に入るのかについてお話したいと思います。

ヴィキングル・オラフソンは、今シーズンにカーネギーホールで演奏予定のピアニストの一人ですが、以前、東京で彼の演奏を聴いたことがあります。2018年にサントリーホール ブルーローズ(小ホール)で行われた、フィリップ・グラスの作品を演奏するリサイタルでした。プログラムは以下の通りでした。

グラス:『グラスワークス』よりオープニング
グラス:エチュード第9番、第2番、第3番、第15番、第13番、第5番、第6番

オラフソンの非常に透明感のある優雅な音色と高い演奏技術は素晴らしく、とても感動しました。彼は演奏の合間にグラスの作品について解説しながら、でも、集中力に満ちた演奏で聴衆をグラスの世界へと誘ってくれました。

フィリップ・グラスといえば、2019年11月にメトロポリタン歌劇場で初演されたオペラ『アクナーテン』を思い浮かべる人が多いでしょう。私は東京の映画館でこの作品を鑑賞する機会があり、その素晴らしさに感動し、今でも大好きな作品の一つです。主人公アクナーテンを演じたのは、カウンターテナーのアンソニー・ロス・コスタンツォでした。

パンデミック中には、コスタンツォはメトロポリタン歌劇場のオンラインコンサート「At-Home Gala」にも出演しました。

その時の彼の様子で最も印象に残ったのは、歌う前と、歌が始まってからの切り替えの早さでした。歌う前は、とても親しみやすく、気さくな話し方で、周りの人と楽しそうに会話していましたが、音楽が始まると、まるで別人のように表情が変わり、歌に完全に集中したんです!(残念ながら、歌う前の様子は、上の動画ではカットされています。)

「アクナーテン」の公演の幕間で、友人でもあるメゾソプラノ歌手のジョイス・ディドナートがコスタンツォにインタビューしました。まだ公演の途中なのに、とてもリラックスして、楽しそうに話している姿に、私はとても感銘を受けました。音楽への情熱と、明るく親しみやすい人柄がよく伝わってきます。多くのアーティストは、公演中は集中力を保つために、普段とは違う態度をとるものですが、彼はリラックスした雰囲気で、楽しそうに話すことで、観客に心地よい空間を演出していました。

アーティストがゾーンに入る方法は人それぞれです。周りの人と冗談を言い合いながら、あっという間に集中モードに切り替える人もいれば、楽屋を出た瞬間からずっと集中している人もいます。私のブログを読んでくださっている皆さんは、ゾーンに入るとき、どのような工夫をなさっていますか?

私は、演奏前にかなり真剣に集中するタイプです。しかし一方で、コスタンツォのように、自分が本当に情熱を注いでいることについて話す時は、私もつい熱く語りたくなります。ですから、私の演奏は「おしゃべり」かもしれません。その意味では、彼の情熱にとても共感します。

どんなスタイルであれ、音楽が始まれば、アーティストの卓越した集中力と、音楽への真摯な愛と情熱こそが、観客を魅了し、感動を生み出すのだと思います。

 

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