『一年』より「6月」 

ファニー・メンデルスゾーンの「6月」は、作品集『一年』より「セレナーデ」という副 題を持ち、冒頭から夏の夕暮れの親密な雰囲気を醸し出しています。作品の冒頭には、 ゲーテの『ファウスト』からの詩句が引用されています。  

Hör' ich Rauschen, Hör' ich Lieder,  
Hör' ich holde Liebesklage?  

ざわめきが聞こえるだろうか、歌声が聞こえるだろうか、  
甘い恋の嘆きが聞こえるだろうか?  

曲は、美しく、情感豊かで、憂鬱で、ロマンチックな旋律で展開し、夜の情景を思い起こ させます。曲が進むにつれて現れる伴奏には、「ギターの音色のように」という意味の指 示があり、弦楽器やアンサンブルのために主に用いられるセレナーデという形式にまさに ふさわしい曲であることが分かります。ピアノソロとして捉えるよりも、伴奏、歌手、そ して複数の楽器が互いに呼応し合う表現として捉えるべきだと思います。  

さらに、曲の中盤に現れる、バロック音楽で主に「悲しみ」や「嘆き」を表現するために 用いられる半音階的な下降音階であるラメント・バスと、引用された詩の中の「嘆き」と いう言葉との関連性を考察するのは非常に興味深いことです。  

表面的な部分の下には、詩、歌、そして歴史的な音楽的参照が織りなす豊かな対話があ り、私はそれが実に素晴らしいと感じています。

 

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