『一年』より「5月」 

ファニー・メンデルスゾーンのピアノ曲集『Das Jahr(一年)』の中の「5月」は、私に とってロマン派ピアノ音楽の中でも最も素晴らしい春の情景描写の一つです。「5月」の 中で、ファニーは春の訪れに伴う再生、温かさ、そして目覚めの感覚を見事に捉えていま す。  

音楽は軽やかさとエネルギーに満ち溢れ、花々が咲き誇る自然の変容を映し出し、世界は 新たな可能性に満ちているように感じられます。  

この曲は、ヨハン・ルートヴィヒ・ウーラントの詩「Frühlingsglaube(春への信仰)」 の一節を引用しています。  

「最も遠い、最も深い谷にも花が咲き誇る」  
(Es blüht das fernste, tiefste Tal)  

この引用は、音楽を理解する鍵となります。メンデルスゾーンはウーラントの詩のイメー ジを音に昇華させ、動き、色彩、そして希望に満ちた風景を創り出しているのです。この 音楽は、季節の美しさだけでなく、春が人々の心にもたらす希望と自信をも称えているよ うに感じられます。  

言うまでもなく、5月は私にとって特別な月でした。今年だけでなく、人生全体を通して 特別な月だったと言えるでしょう。18歳の今年、カーネギーホールでのソロリサイタルデ ビューを果たした月だったからです。今この曲を聴くと、当時私を包み込んだニューヨー クの美しい春の情景――爽やかなそよ風、咲き誇る花々、その素晴らしい香り――が蘇 り、深い感謝の念とともに、未来への希望を感じます。  

このように、ファニー・メンデルスゾーンの「5月」は、音楽には人生の瞬間を永遠に留 め、過ぎ去った後もなお、それらを追体験させてくれる力があることを私に思い出させてくれます。この曲は、まさに5月という季節のように、希望、再生、そして新たな始まり への約束に満ち溢れています。

 

下のアイコンをタップして、このブログをソーシャル メディア、メール、またはお気に入りのメッセージ アプリで共有してください。

前へ
前へ

『一年』より「6月」 

次へ
次へ

レオポルド・モーツァルト