引き算の美学(2025年8月5日)
約2年前に演奏した、シューマン=リスト作曲「ミルテの花」作品25より「献呈」の演奏です。静寂が音楽に力強さを与えています。
最近、「引き算の美学」、つまり音楽作品を解釈する際に「少ないほど豊か」という考えについてよく考えています。
モーツァルトの名言の1つに、「音楽とは静寂の間に起こるものである」というものがあります。また、偉大なコメディアンの、ジョーン・リバーズはいつも、「外出の時は、身につけているジュエリーを全部見て、一つ外しましょう。」と言っていたそうです。これもまた、「少ないほど豊か」を表しています。
2年前にコズモ先生と取り組んだ作品、シューマン/リスト作曲の「ミルテの花」作品25の「献呈」については、2025年3月26日のブログ記事でも書きましたが、先生は、フリードリヒ・リュッケルトの詩でもそうなっていますが、この曲は基本的に二つの部分に分かれており、一つのテーマが終わって次のテーマが始まるのを明確に区別する必要があるとおっしゃいました。
私はコズモ先生のレッスンの後、オペラ歌手のアレキサンダーさんに、この曲の原曲の分析を手伝っていただけませんかとお願いしました。
献呈
君は僕の魂 僕の心
僕の歓び ああ僕の苦しみ
君は 僕の生きる世界
僕がただよう天国
ああ 僕の墓 そこに
僕は 悩みを永遠に葬った
君は憩い 君は安らぎ
君は天から僕につかわされた人
君の愛によって 自分の価値を知り
君のまなざしが 僕を光で満たす
君は愛によって 僕を高める
僕の善き霊 より良き「私」!
君は僕の魂 僕の心
僕の歓び 僕の苦しみ
君は 僕の生きる世界
僕がただよう天国
僕の善き霊 より良き「私」!
(フリードリヒ・リュッケルト、対訳:山枡信明)
アレキサンダーさんは、最後のフレーズには壮大さと感情的な力があり、音楽に反映された言葉の力強さを聴き手に印象付けるには、「間」を強調する必要があるとおっしゃいました。「間」の存在によって、聴き手は次に来る音楽への期待感をより一層高めるので、まるで名言のように、「沈黙」は音楽にさらなる力を与えるために存在すると教えてくれました。
この作品を改めて見つめ、音楽から何かを削ぎ落とすことで沈黙により多くのものを与えるという発想について考えてみると、特定の作品の演奏をさらに効果的にするための手法を発見したように思います。
引き算の美学:より少なくすることは、より多くを与えることにつながる。
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