ピアノの「ピッ」!

音楽の贈り物

まず、「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 ミュゼット(BWV Anh.126 ニ長調)解釈の手引き」(コズモ・ブオーノ著)をお読みください

音楽家は、常に自分の音がどのように聞こえるかに気を配っています。演奏したり歌ったりする音が、十分に美しく、十分に大きく、十分に小さく、あるいは正しい音色になっているかどうか。演奏の後には、うまく演奏できたか、お客様を満足させることができたか、もっとうまく演奏できたのではないか、と自問します。もし、最高の演奏ができなかったと感じたら、その演奏がどれだけ悪かったのかを知りたくなります。

ヨハン・セバスチャン・バッハが2番目の妻、アンナ・マクダレーナに楽曲集を贈ったとき、そこにはメヌエットからロンド、ポロネーズ、コラール、ソナタ、プレリュード、ミュゼット、ガヴォットまで、実に様々なジャンルの音楽が収められていました。このような素晴らしい贈り物が、計り知れない感謝と喜びをもって受け取られたことは想像に難くありません。

さあ、「ピッ」! ひらめきの瞬間です。どんな演奏だったか気になるのは当然ですが、それよりもずっと重要なのは、自分の演奏がお客様にどんな感情体験を与えることができたかだと思います。

演奏家は、練習室での果てしない練習時間が、ただ完璧な演奏をするためではなく、お客様を深い感動、理解、満足感、喜び、そしてときには悲しみや憂鬱で満たすためにあることを忘れてはなりません。

「磨き上げられた演奏でも輝きを失ってしまうほど悪いものはない」ということばを聞いたことがあります。演奏があまりにも完璧になりすぎて感情が欠如しているなら、それは本来の目的を失っているのですね。

コンサートでは、その音楽によって「目覚め」が起き、世界はより良い場所になった!とお客様が感じないといけません。お客様がコンサート会場に持ち込んだどんな重荷も、音楽が始まると少し軽くなる…悩まされていた問題の解決策が、その演奏によってもたらされる…それは、精神が十分に集中し、心と心に扉が開かれ、困難を乗り越える道が開かれたから起きることです。

これこそが音楽の真の贈り物です。音楽は、人生のあらゆるものから私たちを解放し、より良いもの、より幸せな時間、より喜びに満ちた瞬間への道を見出させてくれます。不安や恐怖で身動きが取れないときでさえ、常に私たちを次のステップへと導く、私たちの内なる強さを与えてくれます。

演奏家ならば、あなたの音楽は単なる「音楽」ではなく、「薬」なのです。ただ人に好かれるためだけに演奏するのではなく、癒すために演奏しましょう!