空が急にかげったように、フィリップ・フィリップス (バス)、コロンバスシティズンファンデーションにて (2025年7月2日)
2025年6月6日、ピアニストの三好那奈はニューヨークのコロンバス・シチズン・ファンデーションとアレキサンダー&ブオーノ・ファンデーションの共催によるコンサートで、メインアーティストを務めました。
「インスピレーションの力」と題されたこのコンサートでは、シェイクスピアの作品に着想を得たヴェルディとベッリーニのオペラや、フランツ・リストが編曲した作品が演奏されました。
三好那奈はソロ曲の他、セレステ・シチリアーノ(ソプラノ)とフィリップ・フィリップス(バス)ら2人のオペラ歌手のコラボレーション・アーティストとしても活躍しました。
プログラムは次のとおりです。
I
リゴレットの演奏会用パラフレーズS.434
フランツ・リスト (1811—1886)
三好那奈(ピアノソロ)
Ⅱ
マクベス
気を付けて進め、我が息子よ…空が急にかげったように
ジュゼッペ・ヴェルディ (1813—1901)
フィリップ・フィリップス(バス)
三好那奈(ピアノ)
Ⅲ
ノルマの回想、S.394フランツ・リスト
三好那奈(ピアノソロ)
Ⅳ
ノルマ
扇動する声が…清らかな女神よ…ああ、あのやさしく温かい愛がかえってくれば
ヴィンチェンツォ・ベリーニ (1801—1835)
セレステ・シチリアーノ(ソプラノ)
三好那奈(ピアノ)
『マクベス』のこの曲の中で、バンクォーは恐ろしい予感を抱いています。偉大なるダンカン王が殺害されたこの夜が、いかに自分の死の合図であるかを息子に語るのです。
暗殺者たちがバンクォーのもとに到着すると、彼は息子に逃げるよう必死で訴えます。
気を付けて進め、わが息子よ…
この闇から早く抜け出そう…
言い知れぬ不安が
わが胸に生まれるのを感じるのだ
悪い予兆と疑惑に満ちた不安が
何と空は陰鬱なことか
影がいつもより暗くのしかかっている!
あの夜もちょうどこんな感じであった
ダンカン王、わが主君が刺殺されたのも
千もの忌わしいイメージが
災いを私に告げているようだ
そして、私の思いには立ちふさがる
亡霊とそして恐怖が
ああ!…逃げろ、息子よ…裏切り者だ!
(「オペラ対訳プロジェクト」より)
意外に思われるかもしれませんが、バス歌手のフィリップ・フィリップス博士の本業は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校物理学教授です。国立高等教育研究科学技術研究所は、フィリップス博士を「今日の理論凝縮物質(または固体)物理学の分野における第一人者の一人」と評しています。幼い頃から音楽をこよなく愛していたフィリップス博士は、わずか10年前に偉大なオペラ歌手シンシア・ヘイモンに師事し、本格的な音楽研究を始めました。その後も、ニューヨークではケネス・オーバートン、ケンタッキーではマイケル・プリースリーに師事しました。イリノイ州でオペラとオラトリオの演奏活動を続けており、今夏はイタリアのボローニャで公演を行う予定です。
三好那奈は、アレキサンダー&ブオーノ財団の支援を受けており、同財団とマルチェロ&グラツィアーノ・ロヴィアーロ財団の後援を受け、2026年5月3日(日)、カーネギーホールでソロ・リサイタル・デビューを予定しています。